遺言書の知識
 

　遺言は、個人の最終意思が表示されたものであり、そのような遺言者の意志を法律関係に反映させるための仕組みです。

　遺言がある場合は、その遺言者の意志を尊重する必要があり、その遺言の内容に応じて遺産を分割することになります。

　遺言の内容に反対する相続人がいたとしても、その遺言書が有効である限りは、遺言書の内容を争うことはできないのです。また、遺言については相続人が共同でその内容を実現することが基本ですが、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者がその職務として遺言の内容を実現することになります。

　このように、遺言があれば、財産処理の方法に法的な拘束力を持たせておくことができますので、相続人間で相続財産をめぐって争いが生じることを防止することも可能となります。

　これに対して、遺言書が無い場合はどれだけ生前にご自分の意志を相続人に伝えていたとしても、それには法的拘束力が全くありませんので、その遺志に反する相続人が出てきた場合には、遺産分割協議が紛糾し、家庭裁判所での調停や審判といった裁判手続きが必要になる可能性が高くなります。

　遺言の作成の方法には、「普通方式」と「特別方式」があります。　

　普通方式の遺言としては、

①　自筆証書遺言

②　公正証書遺言

③　秘密証書遺言

以上の３種類がありますが、このうち一般的に皆様が遺言書を作成する場合に用いられているのは、①の自筆証書遺言と②の公正証書遺言がほとんどで、③の秘密証書遺言は特別な事情が無いかぎり遺言書を作成するにあたっては採用されることはないでしょう。

　特別方式の遺言書としては、

①　死亡危急者遺言

②　船舶遭難者遺言

③　伝染病隔離者の遺言

④　在船者の遺言

以上の４種類があります。「特別方式」の遺言書とは遺言者が死に瀕しているなど緊急状態である場合や、交通が遮断された地域にいる場合などに認められる例外的な方式ですので、一般的に遺言書を作る場合に検討する機会はほどんとありません。

　遺言書を作成するときに一般的に使用されている「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」についての解説です。　

　自筆証書遺言は、自分で書いた（自筆）遺言書ということで、民法に以下のような規定があります。

（自筆証書遺言）

民法　第９６８条　

第１項　自筆証書遺言によって遺言するには、遺言者が、その全文、日付及び自署し、

　　　　これに印を押さなければならない。

第２項　前条の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産（第９７７条第１項

　　　　に規定する場合における同項に規定する権利を含む。）の全文又は一部の目録を添付する場合

　　　　には、その目録については、自署することを要しない。この場合において、遺言者は

　　　　その目録の毎葉（自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面）に

　　　　署名し、印を押さなければならない。

第３項　自筆証書（前項の目録を含む。）中の加除その他の変更は、遺言者がその場所を指示し、

　　　　これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、

　　　　その効力を生じない。